【講義】12/22 第11回交通サービス概論
2017.12.26
第11回 交通サービス概論 担当:平野典男
外部講師:一般社団法人沖縄県ハイヤー・タクシー協会 事務局長 津波古修氏
第11回は、一般社団法人 沖縄県ハイヤー・タクシー協会事務局長の津波古修様から「人にやさしいタクシーとは?」というテーマでお話を伺いました。
まず、タクシー業界全体の課題として、1)運転手不足とその高齢化、2)コスト高、3)レンタカーや代行業者との競合、4)白タク行為の横行、などがあるということでした。特に沖縄では、タクシー台数が約3,500台に対し、レンタカーは夏場のピーク時には約4万台もあり競争が厳しいことや、一部の代行業者による白タク行為等の課題があるそうです。
次に、改正タクシー特措法についての説明がありました。平成14年の規制緩和以降、タクシーの輸送人員、1両あたり売上、車両台数はいずれも減少し、市場規模の縮小が続いたそうです。こうした事態を受け、平成21年に旧タクシー特措法、平成26年に改正タクシー特措法が施行され、需要活性化策を講じることになりました。改正タクシー特措法では、供給過剰対策が必要な特定地域や準特定地域が指定され、新規参入や増車、運賃の設定などに一定の規制措置が講じられています。沖縄本島は準特定地域に指定されており、指定後の需給状況やドライバーの労働環境の変化等について現在検証中であるとのことです。
このように多くの課題を抱えるタクシー業界ですが、東京オリンピックを控え、世界水準のサービス・運賃をめざし、様々な取り組みも進めているそうです。1)初乗り距離短縮運賃の導入、2)配車アプリを使ったタクシーシェア、3)事前確定運賃、4)ユニバーサルデザイン(UD)タクシーの導入、5)サービスの多言語化、6)2種免許の条件緩和、7)過疎地域の乗合タクシーなどの取り組みがあります。東京で導入した初乗り距離短縮運賃(2KM730円→1KM410円)については、利用者も運送収入も増加し一定の成果を挙げているそうです。沖縄でも、初乗り距離短縮運賃の導入を求める利用者の声もあるようですが、沖縄の実情に合わせて導入効果があるのかまだ検討中とのことでした。
これらの説明のあと、UDタクシーの動画をみました。欧米では既に普及が進んでいるのに対し、日本はまだまだこれからとのことです。動画では車椅子を横から載せるタイプと、車の後部から載せるタイプの2種類を見ました。車いすの固定やシートベルトの装着までの手順はかなり複雑な印象を受けましたが、こうした手順がスムーズに実施できるよう、ユニバーサルドライバー研修についても力を入れているとのことでした。
津波古事務局長は、前職がホテリエであったことから、接客業で培ったノウハウをタクシー業界にも浸透させていきたい、高齢者、障害者、外国人を含む全てのお客様に感動や喜びを与えたい、と願っているとこのことで、ご自身が見聞されたタクシーでの感動体験について語っていただきました。
これらのエピソードから、沖縄県には、ただお客様を目的地に運ぶだけでなく、おもてなしの心を以て様々な創意工夫をしているタクシードライバーが大勢いらっしゃること、そしてタクシー業界全体で積極的にサービス向上に努めておられることが分かりました。
文責:観光産業科学部 教授 平野典男