【講義】1/27 第14回交通サービス概論
2017.02.01
第14回 交通サービス概論 担当:平野典男
外部講師:郵船クル-ズ株式会社 アスカクラブ会長 幡野保裕氏
今回は郵船クル-ズ株式会社 アスカクラブ会長 幡野保裕氏を講師にお招きしました。
幡野さんは、飛鳥Ⅱの船長をされていた方で、クルーズの歴史、世界と日本のクルーズ事情、クルーズの魅力などについてお話いただきました。
客船は、元々は人流輸送の役割を担っていましたが、飛行機に主役を奪われてから1960年代後半から70年代にかけてレジャー産業に転換、日本ではまだ歴史が浅く、1989年がクルーズ元年になっているそうです。
クルーズの特徴として、サービス業、観光業、メンテナンスなどの工業など多種多様な要素を含んでおり、売れ残りの保存ができない非弾力性、観光、エンタメ、買物など一連の相互補完的なサービスが集まった相補性があるということでした。
クルーズ船の特徴は、
・動くホテル
・安全、設備、セキュリティーの国際基準
・世界の環境基準遵守
・多国籍の乗組員、労働集約的産業
・総客数/総乗組員=約2:1
・スペースレシオ=総トン数/総客数
・個性的
・ベースの船内文化=乗船客 といったものがあり、
環境基準は年々厳しくなっており、今まで通過できた場所が環境保護のためできなくなったり、サービスの多様化により選択肢が多く個性的になっていたり、自国の船にのる人が多く、国民性が異なると同じ船で旅をするのが難しいとかんがえる人が多いのだそうです。
次に世界と日本のクルーズ事情について説明がありました。
世界では、カジュアルなクルーズが多く、船は大型化し、多彩な設備があるということでした。プレミアム船では、学べる講座が充実しており、ラグジュアリー船はオール・インクルーシブ制を導入しているのが特徴だそうです。
続いて、世界のクルーズ船の会社、市場規模、新造船の動向、今後の見通しなどについて解説がありました。
日本のクルーズの特徴は、日本籍船3隻ともラグジュアリークラスの価格帯となっており客船の供給が増えていないということでした。なお、ラグジュアリークラスのクルーズは世界的にみるとシェアは3%で、半数以上を占めるカジュアル船のクルーズがないのだそうです。
日本のクルーズは、選択肢が少なく、近海の気象・海象に恵まれておらず(台風や低気圧)、ロングクルーズとなると休暇が取りにくく、そもそもスローライフが苦手といった国民性もあり、農耕民族のDNAから船酔いに弱いなどの課題があり、特に、FLY&SEAの環境が整っておらず、外国では、航空機のあと船に乗る場合、航空機のチェックインをすると荷物も船に自動的に送られ、手続きも不要というシステムが成り立っているそうで、今後、航空業界との連携も課題となっているということでした。
とはいえ、治安がよい、四季の変化がある、優れた観光資源、富士山・和食が世界遺産に指定されたことによる効果などの強みもあり、クルーズで日本を訪れる外国人観光客は増加しているそうです。
クルーズの魅力はなんといっても、究極のスローライフにあり、クルーズから得る自然現象や風景、人との出会いなどの感動はすべてが本物ということでした。また、パッキングが不要でおみやげもかなり自由などストレスフリーの便利さもあり、多彩な船内プログラム、おいしい食事に楽しいエンターテインメントなど快適に過ごせるのだそうです。
最後に、飛鳥Ⅱに乗船しているカメラマンの方が撮影した写真を見せていただき、非日常の風景にうっとりし、講義の終了となりました。
文責:観光産業科学部 宜志富知恵子