【講義】1/20 第13回交通サービス概論
2017.01.24
第13回 交通サービス概論 担当:平野典男
今回は、鉄軌道についての解説とグループディスカッションでした。
まず、半数以上の会社で赤字になっているという地方鉄道の現状について説明があ
り、活性化のための支援策、存廃の社会的影響の検討が課題になっているそうです。
多くの赤字鉄道は国や自治体から補助金で補てんしており、大手私鉄の運賃値上げは利用者が負担するものであるのに対し、補助金は利用しない人も負担をし、非利用者から利用者への実質的な所得の移転を意味しているということでした。また、企業の経営能率の悪化、企業モラルの崩壊の可能性もあるということです。
費用逓減型産業である鉄道について、その運賃の設定方法を費用逓増型産業である一般企業との比較を用いて説明がありました。
費用逓増型産業では、限界費用価格形成原理により社会的余剰が最大化されるものの、費用逓減型産業では、限界費用価格形成原理に基づき運賃を決定すると、損失が発生し長期存続が難しくなることから、平均費用価格形成原理というものを用いて決定するのだそうです。
つづいて、沖縄県の鉄軌道について、「ゆいレール」の背景について説明がありまし
た。戦前沖縄には4社の鉄軌道があったのが、戦後のアメリカ統治により車優先社会に
なったことで、交通渋滞、無秩序な市街地形成が行われたそうです。それらを解消するため、1972年に沖縄振興開発計画が策定され、1982年沖縄都市モノレール(株)を設立。
1996年着工、2003年開業と30年もの年月をへてできあがったということでした。
ゆいレールの経営は、2015年に初めて黒字になり、開業から10年間の経済効果は、総事業費の7倍にもなるのだそうです。現在、ゆいレールの延長工事が計画されており、2019年には沖縄自動車道入口まで延長し、高速道路との結節機能を強化するということでした。
沖縄鉄軌道導入の検討も行われており、南北に長い地形、偏在する米軍基地等に起因する非効率な地域関連性から生じる本島南北間の地域格差、自動車交通に依存した生活基盤による中南部を中心とした激しい交通渋滞などの課題を解決すべく新たな公共交通システム導入の検討が行われているそうです。
グループディスカッションは、沖縄に鉄軌道は必要か?というテーマで行われ、県外出身の学生や留学生からは必要という意見が、県内の学生からは鉄軌道より渋滞を解消する道路の整備などをという意見がでたり、観光客目線、住民目線によって異なる意見になるなど、学生たちが観光立国沖縄らしい視点をもっていて、興味深いものとなりました。
文責:観光産業科学部 宜志富知恵子