【講義】6/13 第10回飲食ビジネス概論
2016.06.15
第10回 飲食ビジネス概論 担当:上地恵龍
今回は、デフレ時代における飲食ビジネスの事例研究③ということで、「株式会社サイゼリア」を取り上げました。以前とりあげた「俺の株式会社」とは全く異なる手法で、高価値商品を提供しています。
サイゼリアは、全国1316店舗(国内1026、海外290)をすべて直営で経営。人口の多いところに店舗も多く出しています。基本理念は、「人のため・正しく・仲良く」だそうで、ビジネスは人に喜んでもらうためにあり、その目的は社会貢献なのだとか。
サイゼリアの経営の特徴は、
①「製造直販」
自ら商品開発→生産→加工→配送まで一貫して行う形態を取り、品質・価格ともに自らコントロールできるようになっている。加工はセントラルキッチンを導入。
②自社工場や自社農園
オーストラリアに牛肉とホワイトソースの加工工場を作り、専用のレタス・トマト(時間がたっても水っぽくならない)を開発し育成するための農園も完備。
③食材のロスをなくす
セントラルキッチンで加工した商品を解凍してから調理をすると、袋から出す際にソースが100%出し切れない。計算すると3%のロスになるため、調理まで解凍しない。
④冷凍庫からの出し入れ回数の研究
モノを出してしまうという行為は重複する。5分余計にかかるだけで、年間4億ものロスになると計算。いかに省くかを追求。
⑤効率+味のこだわり
料理は冷めた時でもおいしくなければ意味がないという社長の考えがあり、冷めてもおいしいものを目指している。新商品の試食は冷めた状態でする。
⑥厨房は1人
70品のメニューを提供しているが、厨房は1人。1時間で6万円の料理くらいは1人でスムーズにだす。ゆでる、焼く、温めるで6分で11品作れる。出すのがはやければ回転率にもつながる。
⑦厨房の手間を事前に省く合理化・効率化
厨房では包丁は使わない。すべて食材が切られているので必要がない。
⑧提供野菜の鮮度追求「摂氏4度の理論」
収穫後すぐに摂氏4度に保たれた冷蔵庫に搬入。摂氏4度の水は、分子同士が最も強く結ばれた状態になり、野菜に含まれた水分が漏れずに新鮮なまま保たれる。加工工場に運んだら機械ですぐにカットし、数種類の野菜をまぜあわせ、また摂氏4度の冷凍庫で保存。
⑨本部の運営方針の徹底
会議の代わりに7人以内の討論を行う。1人10分言いたいことをいって、7人だと70分。これ以上は集中できず、疲労になるだけ。会議の効率も考えている。
⑩効率的なレジ活用
会計だけでなく、労務管理もできるレジを導入。給与明細はレジから取り出せる。出退勤も管理できる。
⑪食材の発注もレジを活用
食材の出入りが自動的にカウントされているため、過去3週間ぶんの在庫データ、売上データを元に適正な発注数量を自動計算。無駄な発注を防いでいる。
海外進出においても、マーケティングより理論を優先し、撤退を考えるほどの深刻な事態を、経営者の意思決定の速さと英断、一気に半額値下げを行い来客数が9倍に。独資会社ということもあり、トップダウンの指示が有利にでた事例でもあるということでした。
近年はうまさの数値化実験を行っており、もう一度食べたいか食べたくないか脳波を数値化できるように取り組んでいるそうです。(世界初の取り組みとか。)
サイゼリアは、徹底した効率化と理系社長ならではの理論により、成功をおさめている企業でした。高校・大学時代はよく通ったファミレスで、お財布に優しいお値段が魅力的でした。沖縄にはまだ展開されていないのが残念です。
本日の講義は、茨城県つくば市にある茗溪学園高校3年生の生徒さんが見学に来ました。
進路指導の一環で、大学訪問ができるのだそうです。来年度、キャンパスでお会いできるかもしれませんね。
文責:地域連携推進課 宜志富知恵子