【講義】5/26 第6回宿泊サービス概論
2016.05.27
第6回宿泊サービス概論 担当:平野典男
第6回はブライダルサービスを取扱いました。
日本で使われている「ブライダル」という単語は、「挙式、披露宴、及び先立って行われる婚約から構成される儀式全体」を表す和製英語だそうで、英語でいうweddingの意味に近いそうです。
ブライダルは、ホテル業の三大営業部門(客室、料飲、宴会)の宴会の1つで、
歴史からデータまで、ブライダルを掘り下げました。
西欧における歴史として、古代ギリシャ以前、古代ギリシャ、古代ローマ、キリスト教流布後~中世、近世に分け、それぞれの時代にどのような形式で結婚というものがあったかについて説明がありました。日本では、平安時代まで、鎌倉~室町時代、江戸時代、明治~戦前、戦後から現在に分けて説明がありました。
キリスト教結婚式は明治6年から、神前結婚式は明治34年から、ホテルでの挙式は帝国ホテルが大正12年に、総合結婚式場は昭和6年に誕生と、まさかのキリスト教結婚式のほうが、神前よりも前にあったということが分かりました。
昭和40年代からバブル期にかけては、披露宴のショー化、教会で挙式をしてホテルで披露宴をする形が主流となっており、バブル崩壊以降は、平成5年の「ゼクシィ」の創刊によりブライダル情報が増加、個性化・多様化の時代となったそうです。
続いて、ブライダルマーケットを捉えるためにデータから現状を把握しました。
・日本では、平成27年データで、年間63万組(50秒に1件)結婚し、22万組(2分19秒に1件)離婚している
・婚姻件数は中長期的に減少傾向にあり、離婚件数は増加
・出生率の減少が25年から30年遅れで婚姻件数に反映される
・結婚観の変化も婚姻件数の減少要因となっており、昭和59年は「結婚するのが当たり前」が61.9% 「必ずしも結婚する必要はない」が34.3%であるのに対し、平成20年には「結婚するのた当たり前」が35%、「必ずしも結婚する必要はない」59.6%になっている
・平均初婚年齢は、昭和25年は男性25.9歳、女性23.0歳が、平成24年には男性30.8歳、女性29.2歳と上昇している
・生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合)は男女ともに上昇傾向があり、今後も上昇が予測されている
・若者の結婚願望は、ここ30年ほど大きな変化はなく、いずれ結婚しようと思っている未婚者は9割弱いて、結婚願望が低いわけではない
・25歳から34歳の男女の結婚しない理由として、男性は「まだ必要性を感じない」女性は「自由や気楽さを失いたくない」が一番で、結婚できない理由として、男女とも「適当な相手に巡り会わない」としている
・適当な相手に巡り会ったのに結婚できない、結婚の障害となっているものの1位は結婚資金で、その他の理由と比較してもダントツに多い
・就労形態と結婚意欲との関係性として、正規雇用者より非正規雇用者のほうが低くなっている
・婚姻組数予測は年々減少しており、それに伴いブライダルマーケットも縮小傾向にある
・近年の特徴として、「ナシ婚」というのがあり、婚姻件数と結婚式数から半数は結婚式をしていない
・「ナシ婚」の三大理由は、経済的事業・授かり婚・セレモニー嫌いとなっている
・ただし、今後挙式、披露宴を行う予定について、約4割は将来的にあるかもしれないと回答しており、潜在的需要はある
以上のことから、ブライダルマーケットは、マクロでみた場合将来有望なマーケットであるとはいえず、需要が減少する中、競争が激化することが予想されるため、海外も含めた潜在需要の掘り起こしや、商品開発力、販売力が問われる業界であるといえるということが分かりました。
次に、挙式・披露宴の実態として、
・挙式や披露宴、パーティの市場規模は1兆4000億円で、婚姻件数の減少や「ナシ婚」の増加はあるものの規模は横ばいで、施設の供給過多が顕在化
・挙式会場は、約3割が一般結婚式場、約2割がホテル、2割弱がハウスウェディングとなっていて、競争は激化している
・ハウスウエディングの登場等もありホテルのシェアは落ちてきている
・招待客数は、半数は50人から90人となっているが、沖縄や北海道など結婚式に独特の文化があるところでは当てはまらない
・平成26年の平均招待客数は72人、費用総額の平均は333.7万円(うち、カップル自己負担は125万円)となっていて、高品質のサービスを求めていたり、婚姻年齢の上昇により盛大に行う人が増え、挙式・披露宴の費用は上昇傾向にある
・このことが、市場規模が横ばいになっている主な理由となっている
・沖縄リゾートウェディングは平成15年に2500組だったのが平成25年では10921組になっており10年間で4倍以上増えている
・その理由として、海外リゾート地に劣らぬ魅力あるロケーション、挙式後の観光の充実、言葉や健康保険の面で国内という安心感(新婦の約3割が懐妊)、航空路線の充実、多様なスタイルを提供しているなどがある
・沖縄でのリーガルウェディングが香港の人にはステータスとなり増えてきている
・家族旅行がてら来沖し、家族一緒に普段着で挙式をするアニバーサリーウェディングというものもある
・新郎新婦(または家族)のみで写真(ビデオ)撮影だけを行うフォトウェディングもあり、ネックとなっていたタイミング、金銭面をカバーし、気軽に利用できるものもある
ブライダル業界の動向
・圧倒的なシェアを持つ企業はない
・ゼクシィ創刊により結婚情報誌がダントツで会場を検討する情報源となっている
ブライダル商品の特徴
・人生最大のエポックを演出する商品
・厳粛な契りの儀式と心和む宴という二面性がある
・新郎新婦を最高の形で来賓の前に披露するためのハードとソフトから構成される
・一連のプロセスが全てまとまって1つの商品となる
・式場の格式、ブランドイメージ、雰囲気といった目に見えない要素を背景にもつ
・お客様と打ち合わせ、コミュニケーションを重ねながら作り上げていく商品
・予約申し込みが特定の季節、日に集中する
・式場側が提供できる商品数には限りがある(通常1日3組)
・購入に関して女性が主導権を持つ
・高収益商品である(参加人数が多い。単価が高い)
・何か月も前に大量の予約が入り、取消リスクが低い
・PR効果が高い(同年代の子女をもつ招待客、新郎新婦と同年代の男女)
・新郎新婦・参列者のリピート率が高い(結婚記念日、子供の誕生会・七五三、家族のアニバーサリー、勤務先での利用等)
ブライダルをデータから見ると、やらないか盛大にやるかの2極化していることが分かりました。自部署に戻り、既婚者数人に聞いたところ、盛大にやったのは1人、「ナシ婚」が4人で、ナシ婚は上記データにあるように、経済的、授かり婚が理由であり、そして、これまたデータにあるように、いつかはやりたいと思っていることも分かりました。(宜)
文責:地域連携推進課 宜志富知恵子